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研究テーマ・内容

いばらきコホート-科学的根拠に基づく子育て支援のための学融的研究

※いばらきコホートは,立命館大学第3期拠点形成型R-GIRO研究プログラム「学融的な人間科学の構築と科学的根拠に基づく対人援助の再編成」(2016年7月-2020年3月,2019年より「シームレスな対人支援に基づく人間科学の創成」に名称変更)の一環として実施され,継続している研究プロジェクトです。

R-GIRO研究プログラム アーカイブ

近年、少子高齢化や女性の社会参加・核家族化の影響によって育児環境が大きく変化し、養育者、特に母親の育児に対する負担感、育児ストレスが懸念されています。また、高齢出産化が進み、妊娠・出産に対する不安も増大する傾向にあるといえます。子どもを取り巻く社会的環境の変化から、子どもの自己制御や協調性といった社会性の育ちも問題視されがちです。保育・教育の場においては気になる子どもたちへの理解と具体的な支援のあり方に対する関心も高まっています。
私たちの研究室では,親の子育てと子どもの育ちを客観的かつ多面的に定量化し、養育者の子育てと子どもの発達、両者を取り巻く社会的・物理的環境要因とともに継時的に調査することで,科学的根拠に基づく子育て支援のあり方を探究します。その際には,行動計測機器(デジタルペン,モーションキャプチャ,DeepLabCutなど),および行動観察(「かかわり指標 Interaction Rating Scale」を用いた評定を含む)と生理指標の測定(オキシトシン,コルチゾール),面接,質問紙を併用し,親子の関係性の発達的変化を多面的に捉えるとともに,親子関係の中で生じるつまずきの早期発見・早期介入を促進する子育て支援システムの開発と社会実装をおもな目的としています。

東アジア圏の家族観のもとでの科学的根拠に基づく育児・就労支援の構築

東アジア文化圏にある日中韓3ヵ国は地理・歴史・文化的に多くの共通点を有しています。日中韓各国の女性はそれぞれの社会文化の下でどのような育児リソースを利用してその課題と向き合っているのか、そして働く母親のwell-beingや子どもの心身発達はどのようになっているのか,本プロジェクトは、国際的視野から近隣3ヵ国の共通点と相違点を比較し、相互に参考になる情報や有効な解決案を提供するため、3ヵ国の研究者や専門家と共同体制を形成し、共通の社会問題を検討・解決していくことを目的としています。 さらにインドネシアの研究者の協力を得て、イスラーム圏の家族の状況について日中韓3国の調査スキームを用いて調査を行います。本プロジェクトではフィールドワークを行うことで、より現地性の高い(indigenous;インディジーニアスな)研究を遂行します。

こちらのサイトも参照してください(アジア・日本研究所ホームページ)

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関連した子育て世帯の実態・ニーズ調査と支援の充実

今般のコロナ禍は子育て世帯に大きな影響を与えています。例えば、外出自粛、小中高の休校措置、在宅勤務や感染への不安などによるストレスに加えて家族で過ごす時間が長くなることで、配偶者からのドメスティック・バイオレンス(DV)や児童虐待リスクの深刻化が懸念されている傾向が世界的にみられています。また,夫と子どもが遠隔ワークをすることによって妻の負担が従来以上に増加し社会的活躍ができないという問題も生じています。このような状況に対して、私たちの研究室では行政機関とも連携をとりながら子育て世帯の実態・ニーズ調査を継続的に実施し,その時々に必要なエビデンスに基づく支援を提供することを目指しています。また,東アジア諸国の社会文化的要因(政策,公衆衛生や子育て観など)を踏まえた国際比較研究も実施しています。

行動計測機器デジタルペンを用いた子どもの書字・描画研究

フランスSeldage社の研究者とともに行動計測機器「デジタルペン」(ANOTO DP201)を用いて,子どもの書字・描画研究を行っています。デジタルペンは,子どもが絵画を描く速度,筆圧,描き順,軌跡のストローク情報等を正確に測定・記録し,軌跡を繰り返し再生することもできるので,「何を描いたか」という完成された文字や絵の分析だけでなく「どのように描いたか」という描画のプロセスそのものの分析を行うことが可能となります。
書字・描画に必要な筆運動作の制御,ストローク単位を構造化する能力,およびその発達過程について調べているほか,レイの複雑図形,ベンダーゲシュタルトテスト,DAM人物画テストなどの描画発達検査への応用も行っています。

d2-R テストを用いた視覚的注意の測定とその発達,および国際比較研究

d2-R テスト(Brickenkamp, 2009)とは,ドイツで開発された視覚的注意を測定するための作業テストで,欧米では臨床現場でも基礎研究でも最も広く用いられているテストのひとつです。手続きが単純なうえ,所要時間も約5分と短く,参加者に負担の少ないことが利点です。このテストを日本でも標準化することを目的として,6歳から80歳台まで約600名の方々にご協力をいただきながら,フランスやドイツのデータとの比較,また発達的変化,ADHD傾向との関連について調べています。

日本語版d2-R テスト用紙はこちらからダウンロードできます
D2-Rテスト